諸星大二郎の碁娘伝

諸星大二郎という漫画家は、好きなひとには本当に堪らない不思議な魅力に溢れた作風で、さまざまの漫画を描いている漫画家だ。

 

彼のファンは新作や話の続きが出ると今度はどんな話を読ませてくれるのだろう、というドキドキわくわくで一杯の期待を抱き、またそれを充分満たすような話を提供してくれる、そんな漫画家だと思う。

 

ある漫画のアシスタントの知り合いが「あれだけの自分の世界を持っていて、それを貫きとおして漫画を描ける、そんな漫画家になれたらなあ」と言っていたのを思い出す。

 

いわゆる六大学の出身であった彼女が選んだ道、漫画を描くということにおいて、諸星大二郎の漫画家としてのスタンスは、憧れと理想であったのであろう。

 

碁娘伝の内容について

 

諸星大二郎には日本の古代の話、中国の昔話や昔の中国を舞台にした漫画が幾つもあり、それがまたそれぞれ独特の世界観を持つ物語になっている。

 

そのひとつに「碁娘伝」がある。これは、碁と武道に優れた美女の武勇譚、といったもので、玄宗皇帝の時代(唐の頃)の物語である。

 

第一話の表題にもなっている「碁娘伝」は、夜な夜な妖怪が出るというので誰も居つかない、昔は立派なお屋敷だった城外にある、高というひとの家を度胸自慢の武巨が、そんな妖怪なんぞいるものか、いたら俺がふんずかまえてやる、と言って一晩をその家であかすことになった。そこから始まる。

 

武巨はその屋敷を夜に訪れる。荒れ果てた屋敷の中、部屋に置いてある碁盤にだけ、なぜかほこりがついていない。

 

武巨はそれを不審には思うが、余り気に掛けず夜は長いと言い置いて酒を飲み始める、そのうち一陣の風とともにカーテンが揺れ、そこから一人の女が現れる…。

 

絶世のと言っても良い美女が武巨の前に立っている。「だれだ!?」さすがの武巨は顔色一つ変えない。「夜は長うございます おひとりでは退屈と思ってお相手にまいりました」女は答える。

 

武巨が妖怪とはお前のことか、などと言うと女は碁の相手でもしてさしあげようというのです、と答え、碁石を青爺に持ってくるよう促す。

 

この青爺という老人はいつの間にか武巨の後方に居た。以前、ミステリーやサスペンス映画の巨匠、ヒッチコックがインタビューで、人間怖いと思うことには法則のようなものがある、それを使うと理屈でなく怖いのだと言っていて、そのひとつとして「気がついたら誰かがそこに居る」ことを挙げていたのを思い出す。

 

重要でないような一コマだが、ここの青爺の描かれ方は確かに「怖いもの」のそれになっている。碁石を用意すると武巨は自分も少しは碁を打つと言い、女と武巨は碁を指し始める。

 

自分には色仕掛けは通用しないと言っていた武巨が、女に「もしわたしに勝てたらわたしを自由にしてもよろしくてよ」と言われ「面白い それも一興だろう」と応えると女は「そのかわり 私が勝ったらいただきたい物がありますの」「ほう 何をほしいというのだ」「それは後で…」とそんな会話を交わし二人は碁を打ち続ける。

 

そして女は武巨に勝つ。「ではお約束の物をいただくわ」とここで初めて武巨の顔色が変わる。

 

「な………何をとるというのだ!?」武巨の運命は?そして、碁娘の「目的」とは?

 

八ページの間にこれだけの要素が詰め込まれ、言葉と絵のバランスも良く、動きやテンポもスムースに進んで行く。面白い。話にぐいぐいと引き込まれる。

 

続きもある碁娘伝の漫画

 

この第一話の次に描かれた「碁娘後伝」は、実に八年の歳月を経て「ようやく念願かなって(作者あとがきより)」描かれたものである。

 

諸星大二郎といえどもいつも好きなものを好きな時に描けると言う訳でもないのだろう。数年の年月を挿んでそれから二つの話を描き、その四つの話を一冊にまとめたのは、実に十六年後である。

 

この一連の話は、特に囲碁の知識を必要とはしない。話の中に、碁の知識が活かされた話の運び(碁盤と、碁娘の剣を取りながらの動きがオーバーラップされるなど)として碁が活かされてはいるが「こういうものも面白いと思って貰えるようなら、碁と剣を華麗に操る美女の物語、機会があればまた描いてみたいものです。」という言葉でしめられている。

 

作者のあとがきの通り、痛快で面白い、また独特で何度読んでも飽きない、そういう話になっている。

 

「また描いてみたい」という願いはまだかなえられていないが、それが実現することを、いち読者として願うばかりである。

関連ページ

ねこねこ日本史
ねこねこ日本史はちょっとした勉強にもなるので歴史好きの方は必見となる漫画になりそうです!
ハンターハンター
ハンターハンターの漫画紹介。面白さが感じられる内容が良い点です!
ダイヤのA
お勧め漫画として野球漫画のダイヤのAがありますので内容を紹介します。
天は赤い河のほとり
篠原千絵さんの作品「天は赤い河のほとり」は読み出したらとまらなくなるような作品です!
東京アリス
有栖川ふう主役の東京アリスという人気少女漫画がありますので取り上げてみます。
忍者ハットリくん
かなり懐かしいかもしれないですが忍者ハットリくんはアニメで有名ですが漫画もお勧めです!
沈黙の艦隊
国家として独立する沈黙の艦隊の漫画について。
信長協奏曲
2014年何かと話題の漫画「信長協奏曲」を取り上げてみました。
腹話術師
つげ義春の腹話術師は怖い部分もあり興味がそそられるような漫画になっております!
進撃の巨人
大人気漫画の進撃の巨人はやはりおすすめ作品の中でもTOPクラスになっていますので是非読んでいただきたいです!
PLUTO(プルートウ)
漫画「PLUTO」は素晴らしい作品ですので是非読むことをお勧めします!
蟲師(むしし)
好きな方も多い漫画「蟲師(むしし)」の情報。
じゃりン子チエ
かなり昔の漫画ですがじゃりン子チエはアニメもいいですが漫画も面白いので紹介します。
GANTZ
映画にもなったGANTZの漫画。読んでみると良さが分かります!
河より長くゆるやかに
現在でも色褪せない漫画「河より長くゆるやかに」の情報です。
男の華園
あまり知られていないかもしれませんが「男の華園」という漫画もおすすめ出来ます。
ねずみ男の冒険
漫画でねずみ男の冒険は他の漫画にはない部分が多く見られるのでご紹介します。
宇宙兄弟
人気漫画になっている宇宙兄弟を取り上げてみました。
境界のRINNE
高橋留美子先生の漫画の境界のRINNEは素敵な作品になっていますのでお勧めです!